カウンセリングでの「見立て」
















桜満開ですね。新学期スタートということで、カウンセリングのスタートの部分に触れたいと思います。

「心理面接の方法-見立てと心理支援のすすめ方-」 著:永井撤 2013年 新曜社

今日はこの書籍について書きたいと思います


「見立て」とは


カウンセリングに来られたクライエントさんと
はじめてお会いする時
通常は、インテークと呼ばれる
いわば情報収集の時間を頂きます

そこでは、いきなり
悩みの深い部分に触れずに
クライエントさんをより幅広く深く理解する為に
悩みのきっかけ、家族のこと、幼少期の事などを
こちらから質問させてもらいます

そこで得た情報を基に
どのように関わる事が出来るか
クライエントさんにどんなことが必要か
どんな可能性があるか
など、考えていきます

そのようないわば仮説を「見立て」と呼びます

「見」という視点

インテーク面接の方法論的なこと
(例えば、何を訊くかなど)は
様々な書籍が出ています




この書籍の勉強になるな~のポイントは
「見」という言葉をつかって
見立てから終結までに必要なポイントがまとめられていることでした

・「見定め」「見分け」「見究め」「見渡し」「見通し」
問題や病理を正確に捉え、適切に対処するため
問題の背景にはどんな事があるのか、
そして個人の心の中だけでなく
どんな環境に身を置いているのか
どんな資源があるのか
などを考慮しながら
カウンセリングがどのように進んでいくのかを
見通すこと

・「見守り」「見届け」
カウンセリングが進む中で
クライエントさんがもつ
成長力を信じること
解決にむけて
クライエントさんが
自分で頑張っていけるように
あたたかい眼差しをむけること

・「見出し」「見直し」
最初にたてた見立てがあっているか
常に見直し、より有効な関わりができるよう
柔軟に対応すること
そして、クライエントさんが
自分の新しい可能性に気付き
変化していくために
アンテナをはっておく事

・「見捨てる」「見放す」「見限る」「見下す」
これらをクライエントさんにしないこと
当たり前だけど難しいことです

抵抗、怒りや依存を向けられたときに
どのように反応すればいいか、
カウンセラーである私が
どのような人間であるか
どんな感情を抱きやすいか
常に意識しておく必要がありますね

見立てるために

私がよく思うのは、
適切に見立てるために必要なことは
「引き出し」の多さと「直感」
じゃないかなと思います

カウンセリングよりまず
精神科に行ってもらった方がいい
という状況に
カウンセラーの方なら出くわすでしょう

それに気付く事ができるのは
精神医学の知識の有無と
「なんかおかしい」「いつもと違う」
などという感覚と思います

それから
心理臨床の諸理論や考え方を知っていれば
それらと照合して
関わりの目安にすることが出来ます



たとえば前の記事
悩みに共通する根っこ
https://www.aliavasse.com/2018/03/counseling.html
では、悩みに共通する根っことして
無条件の愛情を求める衝動について触れました

クライエントさんを理解するための
ひとつの材料になります

たとえば、
「仕事を上手くこなすことが出来ない」
という悩みを抱えた方の話を聴いていると
どうも仕事は上手く行っている。

どういう状態が「上手く」なのか
訊いてみると
それはそれはとても高い理想で
スーパーサイヤ人じゃないと無理やん
って思うことがあります。

でもきっとそう思わせるには
そうでないと認めてもらえないと
いう歪んだ確信があるから、
つまり過去に母親が完璧でないと
褒めてくれなかった(認めてくれなかった)
という可能性が仮説のひとつになります。

もしそうだとしたら、
〈理想が高いですよ〉なんて言うと
「また認めてもらえなかった」と思うだろうし

認めてあげようと思って
〈すごく頑張ってますね〉と言うと
「頑張っている"から"認めてくれている」
とさらに頑張ろうとしてしまいます。

そのクライエントさんにとって必要なのは
どんな自分も認めてもらえること
(これを無条件の肯定的関心というのでまた触れたい)

と思います。過去にその経験がないので。

…という風に方針を立てられます。

クライエントさんも人それぞれ

理論通りに面接が進むことは
なかなかありませんし
複雑なケースが多いです

しかし理論を知らずに関わる事は
自分が何をやろうとしているのか
どこから手を付けたらいいのか
分からなくなると思います

逆に
クライエントの語りから
理論に当て嵌めて見立てをたてても
なんだかしっくりこない

なんてこともあったりします
「何か違う」という感覚こそ
まさに直感と思います

直感の方が大事だからそれを優先しろとは
思いません
ただその直感に気付き
頭の片隅に置きながら
見立てをたてることは有効とおもいます

余談ですが
私が学生の時
教授からもらった
「型を知っているから型破りができる」
という言葉があります
歌舞伎役者かだれかのことばの
受け売りだそうですが

カウンセリングにおいても言える事だと思います
型(理論)という引き出しと
型破りという直感的なパフォーマンス

どっちかだけの自己流はよくなくって
クライエントさんを大事にするため
にバランスが求められます
 

さいごに

今回は「見」というキーワードから
カウンセリングでの見立てを
考えやすくするポイントを学びました

クライエントさんに
より役立つ時間を過ごしてもらうために、
見立ては重要だと思います

ただ教科書通りの見立てに
固執することもまた
柔軟さの欠けたカウンセラーだと
思ったりしますので
直感に気付くことも大切だと述べました。

ある程度経験を積んだ
カウンセラーは
自分がたてる見立てや関わりが
クライエントに最適か
みる習慣をつくりたいものです

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