共感的傾聴術



共感的傾聴術-精神分析的に"聴く"力を高める- 著:古宮昇 2014 誠信書房

以前に古宮先生の書籍について書いた事がありますので
併せて読んでもらえると嬉しいです↓

悩みに共通する根っこ


今日はこの書籍についてです。
 

流派による違い?

カウンセリングには様々な流派があります。
たとえば来談者中心療法、精神分析、認知行動療法など
その中でもさらに枝分かれしており、
たくさんあります。
 
昔から、来談者中心療法と精神分析は
全くの別物として論じられてきた印象です。
私も「共通点はあるものの少し違う」と思っていました。
 
確かに違う部分はあるけれども、
古宮先生はこの書籍で
来談者中心療法で有名なロジャーズと
精神分析の創始者のフロイトの
それぞれの理論を引用し
説明の仕方の違いだと述べています
 
今のカウンセラーが表面的にしか
理解していない誤解された各理論
を教えてくれ、
根本には"共感"することの
大事さがあるということを
例や筆者の事例を用いて
説明してくれています

例えば…

精神分析は過去を見つめなおして
洞察を深めるもので、
分析者(セラピスト)は中性な態度で
接する冷たいもの
 
一方、来談者中心療法は
過去よりも今ここを大事にする
暖かい受容的な態度で接する
などと思われているようです

でも、来談者中心療法の
「自己実現」という概念では

理想自己と現実自己があって
理想自己は、過去の経験からつくられる
つまり、母親が良しとする価値を取り入れた
ところから作られる理想像と説明されています。

これは、ひっくり返すと
精神分析でいうところの
過去に母親から受け入れてもらえなかった経験
から、受け入れられる為の自分

と同じことだと思います。


私は古宮先生の書籍を
大学院時代から読んで
勉強させてもらってましたが
 
いつも来談者中心療法的な
方法でカウンセリングしておられる
と勘違いしていたので
精神分析の主軸にしておられると
この書籍で知ってビックリしました
 

転移と共感

この書籍では
 
より実践的なこと、
カウンセリング中、
クライエントさんとカウンセラーの間で
起こる目に見えない事を取り扱っており
 
特に"転移"に関して
その理解の仕方や取り扱い方について
説明されています
 
転移とは
小さい時に親などに向けていた
欲求や対人パターンなどを
カウンセラーに向けること
 
なんですが、分かりにくいですよね。。
 
ざっくり言うと、たとえば
認めてもらえなかった時に
感じていた母に対する怒りを
カウンセラーに向けて
「あなたもどうせ認めてくれないんでしょ」
と怒りの感情を持って話してしまう
 
ということです。
もちろん怒りだけでなく
好きだ、甘えたい
という気持ちを向けることもあります。
これを陽性転移と言うのに対し
さっき例を陰性転移といいます。
 
この向けられた転移という現象に
カウンセラーが巻き込まれると
カウンセリングは進展しません
 
この転移を真から
"共感"することで
話が展開していきます
 

学んだこと

共感や受容は
大学院の時からずっと訓練してきた
とても大事な私たちの商売道具みたいなものです
それは
 
良い、悪い、
という評価の中で苦しんできた
クライエントさんを
評価せずありのままの
存在として認めることが
成長に繋がるからです
 
カウンセリングを進めていくと
〈あ、このクライエントさん変化してきたかな〉
と思う事があります。
もちろん本当に成長してきている場合もありますが
 
気を付けないといけない事は
カウンセラーに嫌われたくないという
転移から、
「よくなってきました」
と、優秀なクライエントを演じること
 
でも、そうさせてしまうのは
カウンセラーが
クライエントさんの苦しみに
思いを馳せず、
真の共感が出来ておらず
 
知らぬ間に
〈私にとってそれはいいこと、わるいこと〉
を伝えるような応答をしているということ
 
これに細心の注意を払いなおす
必要があるなと
この書籍で思いなおしました。

 
 

さいごに

正直言って専門用語が多く
一般の方が読んでも分かりにくいと思うんです。
ただ書き味は相変わらず読みやすく
心理学の勉強がしたい方にはお勧めと思います
 
これまでにカウンセリングを受けた方や
受けようと思っている方は
 
カウンセラーの前での自分は
どんな自分かを振り返って
 
もし、いい人ぶっていたら
それは転移でもあるし、
カウンセラーが自分のことを
評価なしに受け入れてくれていないかもしれないです
 
だからといって悪いカウンセラーだと決めつけず
それを素直に伝えてみると
新たな発展があるかもしれません
 
これを会社の上司との関係などに
置き換えてみると
また気づきがあると思います

前回の記事

今日もありがとうございました。
 

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